「ネットワークストリーマー」を作ろう
鳴らぬなら 鳴らせてみせよう ストリーマー
てことで、作っちゃいましょうね。
できること
自家製「ネットワークストリーマー」でできることは次の3つ。
- AirPlay
- Spotify Connect(Premiumアカウントが必要)
- DLNA*1
他にも作り方次第でネットラジオの再生等もできるのだが、どの作り方でも、この3つは実現できると思ってよい。
ところで「AirPlay」や「Spotify Connect」は対応できるのに「Chromecast」や「Alexa Cast」に対応できないのは何故か。本来、「DLNA」以外はメーカーの独自規格なので技術仕様は公開されておらず「ネットワークストリーマー」を対応させる為には、各メーカーとライセンス締結して技術開示または再生する為のソフトウェア等を提供してもらう必要がある。「AirPlay」と「Spotify Connect」は、有志がその仕様を独自に解析して作製したオープンソース版のソフトウェアが存在しているので利用できるのだ。
そんな訳で「AirPlay」は最新のAirPlay2には対応しておらず、「Spotify Connect」も今後登場するSpotify HiFiに対応できるかどうかはわからない。現在利用できている機能についても、いずれ使えなくなってしまう可能性はゼロではない。たとえ使えなくなったとしても文句を言える立場でないという点だけは理解しておこう。
さて、では実際に作る手順に入ろうではないか。
前述の通り「ネットワークストリーマー」の機能はソフトウェアで実現されるので、材料としてソフトウェアを実行するためのコンピューターが必要となる。材料が変わればレシピも変わるので、今回は2種類のレシピを書いておく。
レシピ1:使わなくなったPCを使う
押し入れに使わなくなったPCが眠っているなら、「Daphile」という音楽用OS(正確にはディストリビューション)をインストールすれば自家製「ネットワークストリーマー」の完成だ。
「Daphile」の設定はネットワーク経由でブラウザ上で行えるので、インストールしたPCにモニターやキーボードやマウスを付けなくてもよい。勿論Linuxの知識がなくても全く問題ない。
材料
- "使ってないPC"
最低スペックは以下のとおり(Intel系であることに注意)。▪ Processor: x86 architecture based, minimum i486 ▪ RAM: 512MB ▪ Network adapter: Ethernet and/or wireless ▪ Bootable storage device: 2GB (SATA, IDE or USB) ▪ Audio device: internal (PCI), USB or FireWire
- USBメモリ(16GBもあれば余裕)
道具
- "作業用PC"
インターネットに繋がっていてUSBメモリが接続できればOSはWindowsでもMacでもLinuxでもよい。
作り方
大まかな流れは以下の通り。
- "作業PC"に「Daphile」公式サイトからISOイメージをダウンロード
- 何かしらのフリーソフトでUSBメモリにISOイメージを焼く
- "使ってないPC"にUSBメモリを挿す
- "使ってないPC"にLANケーブルを繋ぐ
- "使ってないPC"をUSBから起動させる(BIOSでUSB起動を選択)
- ”作業用PC”からブラウザでアクセスしてインストール
- インストール完了後、"使ってないPC"にUSB-DACを繋いでから再起動(USBメモリは抜いてOK)
- ”作業用PC”からブラウザでアクセスして各種設定する
詳細は、公式HPのインストールマニュアルを参照してほしい。
レシピ2:ラズパイを使う
使わなくなったPCが手元にない場合は、代わりに"ラズパイ"と呼ばれる手のひらサイズのコンピューターボード「Raspberry Pi」を使おう。
こんな基板にモニターとマウスとキーボードを繋げば普通にPCになるんですよ(OSはLinuxだけども)。
ラズパイには「Daphile」はインストールできない*2ので、以下の音楽用OS(正確にはディストリビューション)のどれかをインストールするだけ*3。
- 「Volumio」
- 「Moode Audio」
- 「piCorePlayer」
「Daphile」同様、設定はネットワーク経由でブラウザ上で行えるので、インストールしたPCにモニターやキーボードやマウスを付けなくてもよい。またLinuxの知識はなくても全く問題ない。Volumioは利用者が多いのでネット上に情報が多く、設定画面も日本語に対応しているのでこの中では一番初心者向きかもしれない。
材料
- "ラズパイ"
次のどちらかお好きな方で(「Raspberry Pi Zero」系は有線LANがないので今回は除外)- 「Raspberry Pi 3 Model B+ (RPi3)」
- 「Raspberry Pi 4 Model B (RPi4)」(メモリは2GBもあれば十分)
- microSDカード(16GBもあれば余裕)
- ケース(ラズパイの製品にあったもの)
- 電源(ラズパイの製品にあったもの)
道具
- "作業用PC"
インターネットに繋がっていてmicroSDカードが接続できればOSはWindowsでもMacでもLinuxでもよい。
作り方
大まかな流れは以下の通り。
- "作業PC"にインストールしたいOSのISOイメージをダウンロード
- 何かしらのフリーソフトでmicroSDカードにISOイメージを焼く
- "ラズパイ"にmicroSDカードを挿す
- "ラズパイ"にLANケーブルを繋ぐ
- "ラズパイ"にDACを繋ぐ
- "ラズパイ"に電源を繋ぐ(電源ONになって起動する)
- ”作業用PC”からブラウザでアクセスして各種設定する
詳細は各種インストールガイド(非公式含む)を参照してほしい。
- Volumio Documentation
- MoOdeAudio Installation Guide | HiFiBerry
- Getting started | piCorePlayer documentation
あとはググって解決。
完成
今回は自宅に転がっていたRPi4にレシピ2で「Moode Audio」を選択してネットワークストリーマーにしたものをUSB-DAC「RME ADI-2 DAC FS」を繋いで使っております。
iPhoneをUSB-DACに繋いだ時よりも音が良い気がするのは真心込めて作ったおかげでしょうか…。
今回使用しているケース(RPi4用なので注意)
「Moode Audio」を入れたRPi4(+USB-DAC)はこれのPDポートから電源とってます(I2S-DACを使うと電圧不足になるかもしれないのであくまで参考情報として)。
補足
その他、役に立つかもしれない情報。
系統
今回紹介した4つは、使用されているソフトウェアで大きく2つの系統にわかれる。
「MPD」ベース
「Volumio」と「Moode Audio」はこちら。
- "Music Player Daemon(MPD)"ベースで構築されている
- といっても「AirPlay」と「Sports Connect」はMPDに依存している訳ではない
- プラグイン扱いされているけど実際はそれぞれ別のソフトウェアがMPDと独立して動作している(筈)
- 後述の”LMS”も導入できるらしい(が、それなら最初からPiCorePlayerでいいような…)
「LMS」ベース
「Daphile」と「piCorePlayer」はこちら。
- "Logitech Media Server(LMS)"と "Squeezelite"というソフトウェアで構築されている
- ”LMS”が配信側、”Squeezelite”が再生側
- それぞれを別のPCで動作させることもできる(そのほうが音質が良くなるという人も)
- 各OSの設定はOSの管理画面、"LMS"の設定はLMSの管理画面で行う
- 「AirPlay」と「Spotify Connect」は"LMS"のプラグインとして設定する
- ここはMPDベースに比べると画面的にわかりにくいかも
DAC
USB-DAC
”USB Audio Class 2.0"対応であれば「Daphile」、ラズパイ系どちらでも使える。
- 対応してない製品は恐らく稀
- 「ネットワークストリーマー」の電源を入れる前に電源入れておかないと認識されないかも
I2S-DAC
ラズパイ用のDAC。メリットとデメリットをまとめてみた。
- メリット
- ただの基板なのでUSB-DACより総じて安い
- ラズパイの上に重ねるだけなのでサイズが小さくてよい
- ピンからキリまである(3000円~数万円)
- ラズパイオーディオ全盛期に比べると数は少なくなっているかも
- 参考:Raspberry Pi の HiFi DAC 一覧まとめ(I2S出力)
- デメリット
- ラズパイ以外では使えないので再利用しにくい
- Amazon等のECサイトは偽物が出品されている可能性あるので、なるべく信頼できるサイト(できれば直販)で買うのが望ましい
- ケースを買うときはDAC含めて考えないとケースに入らないので注意
ラズパイ
触ったことない人向けの情報。
- 値段が値段なので、耐久性はそれほど高くない
- なので中古は正直オススメしない
- RPi3とRPi4のどっちにすべきか悩んだら以下で考えると良い
- RPi3
- オーディオ的にはスペックは十分
- スマホの充電アダプタやモバイルバッテリーで動く
- オーディオ以外の用途で使おうとするとスペック不足になるかも
- RPi4
- オーディオ的にはそのスペックは要らないが、他の用途でも使える
- スマホの充電アダプタやモバイルバッテリーでは電圧不足になるかもしれない(出力と消費電力による)
- どうして3つも紹介するのか
- それぞれ音に拘って作られているので聴き比べとかできるし…。
- 普通に「Raspberry Pi OS」とかインストールして「Shairport Sync」と「librespot」入れるんじゃ駄目なのか
- それができる人はそれでもいいんじゃないでしょうか
- RPi3
USBメモリ/SDカード
- どうやってISOイメージを書き込んでる?
- 最近は「rufus」ってのを使ってます。
- 一度書き込んだら、Windowsでちゃんと見えないんだけど?
- 以下の手順を参考に一度初期化しましょう。
Raspberry Pi用に使用したSDカードをWindowsで使えるように戻す - Qiita
※誤ってHDDやSSDを初期化しないように注意
- 以下の手順を参考に一度初期化しましょう。