ボークスのIMS 1/144「バッシュ・ザ・ブラックナイト」を作った
ガンプラ素組みおじさんによるFSSインジェクション・キット体験記。
コロナ禍の巣ごもり需要でガンプラが人気らしい。その人気に目をつけた転売ヤー達の買い占めのせいなのか世界的な人気のせいなのかわからないけれども、たしかに店頭で欲しいキットが売っていない。せっかく閃光のハサウェイを見て久しぶりにガンプラを作りたくなったのに…メッサーがめっさ作りたい気分だったのに…。
とフラストレーションを溜めていたら、偶然にも「FSS」のインジェクション・キットの再販予告を見つけてしまい幸運にもAmazonで買えてしまった…。
「FSS」とは?
『ファイブスター物語』(ファイブ・スター・ストーリーズ、英字表記:The Five Star Stories、略称:FSS)は、永野護による日本の漫画作品。ジャンルはSF(サイエンス・フィクション)に分類されるが、永野自身は「おとぎ話」であると公言しており、欧米で言うサイエンス・ファンタジーにあたる。角川書店発行のアニメ雑誌『月刊ニュータイプ』1986年4月号から、休載を何度か挟んで連載されている。また、1989年には第1話を基にした劇場用アニメーション映画が作られている。今までに単行本を累計850万部売り上げている
作者の永野護は、機動戦士Zガンダムに登場するリック・ディアスやキュベレイ、ハンムラビなど他のMSと一線を画す独特なデザインが特徴のメカニックデザイナーだ。代表作としては「重戦機エルガイム」が有名でこちらはキャラクターデザインも手掛けている。
『FSS』は、永野が『重戦機エルガイム』放映中に雑誌媒体などで発表した関連イラストや自身が考えた裏設定などがベースになり、発展して行った作品である
とのことで、作品中に登場するロボット兵器のデザインも基本的にエルガイムに似ているのだが、TVアニメというスポンサーを含む関係者の意向という名の制約を受けるエルガイムとは違って作者である永野本人の意思がそのままに反映される漫画作品に登場するロボット兵器であるモーターヘッド(MH)は、中世騎士風のデザインを基本としたロボットであることにくわえてアニメーション動画や玩具展開用に省略されがちな細部デザインも妥協なく書き込まれていることからTVアニメ作品に登場するロボットに比べ芸術的なセンスが圧倒的に高いのが特徴だ(早口。
さてそんなMHであるが、残念ながらガンプラのような形式での販売が行われてはおらず、ガレージキットとしての発売が基本となっている。
これは連載当時ガレージキットが盛り上がりを見せていた事と、原作者の永野護が大手メーカーによる商品化に難色を示していたからであるが、この姿勢は現在も継続されている。
過去の遺恨も多分にありそうだが、永野本人もモデラーなので原画デザインの再現性にこだわっているのだろうか。ともかく、デザインは抜群に格好良いのに模型はガレージキット以外存在しないというにわかモデラー泣かせの作品であったのだが、今世紀になって「インジェクション・キット」と呼ばれる普通のプラモデル形式でも販売されていることを知った。
ボークス(volks)のインジェクション・キットは、ある程度色分けされており塗装をせずともそこそこ満足できるというレビューをいくつか見かけたので興味はあったのだが、製品ページを見るたびに品切れでこれまで買う機会を逃していたのだが、今回偶然にも昔からの憧れであった「バッシュ・ザ・ブラックナイト」を手にすることができた。
「バッシュ・ザ・ブラックナイト」とは?
バッシュ (VATSHU 別名The Black Knight) は、漫画『ファイブスター物語』に登場する架空の兵器、モーターヘッド(MH)の一つで、L.E.D.ミラージュと共に物語を象徴する主役級のモーターヘッドである。 バッシュ専任のファティマはエスト。
重戦機エルガイムに登場するバッシュが元になっているのでデザインは似ているものの、中世騎士風になっており、よくわからんけど滅茶苦茶カッコいいやつ。
自分はFSSを初期しか読んでいないこともあって、バッシュとL.E.Dミラージュのデザインが鮮烈に記憶に残っており、正直今に至るまでこの2体以上にカッコいいと思ったロボはいない。30年以上経て、ようやくそのうちの1体の模型を作るとは感慨深い。
長生きしてよかったぜ…。
開封の儀
外箱
箱のサイズ感は初期のMG位なサイズ。
猫氏もジャストフィット。
パーツ
内部フレームとかは最低限しかない割にそこそこのパーツ数だ。
説明書
完成写真が格好良すぎる…。早く完成させたい。
この時点で「接着剤」が必要ことに気付く。そう、最近のガンプラは接着剤が要らないので接着剤の存在をすっかり忘れていた。
え、接着剤だけじゃなくて塗料も? でも、素組みでもそこそこイイ感じになるってレビュー見たし…。
流石に顔は塗らないと格好悪いか…。
道具
そんな訳で今回は次の道具を使うことにした。と言っても、接着剤以外は全てガンプラ作成で利用しているものだ。
プラモデル用接着剤
ニッパー
カッター
ピンセット
塗料
上手く筆塗りできる自信もないので、既に持っているガンダムマーカーを最低限の塗装用に利用することにした。
今回は顔の「赤色」と「瞳色」、「目の縁色」にそれぞれ"赤色"と"黄色"のマーカーを使った(「瞳色」は"ピンク"でも良かったかも)。
- スミ入れマーカー 今回のキット、素材のせいかスミ入れしようとしてもうまく塗料がのらなかったので主にパーツを切り取った後の白くなった部分をごまかすために使用した。
作ってみた
頭部
初っ端から細かすぎて中年には厳しい作業から始まった…(写真を拡大しすぎてボケボケで申し訳ない)。
「赤色」のマーカーを使ったが、下地が黒なので丁度本来の指定色である「ボルドー」っぽくなった。結果オーライ。
塗りに時間がかかったものの、無事に頭部完成。
胸部
腹部
腰部
上半身完成。顔の色塗りこそ大変だったものの、ここまでは特に問題もなく順調だ。そう、
ここまでは。
脚部
足。ガンプラではありえない尖り具合。
腿。ここだけみるとエルガイムのヘビー・メタルっぽい。
脚全体を組む工程で問題発生。足首のボールジョイントが足のポリキャップにどう頑張ってもはまらない。ふと、足のポリキャップ部分を見ると内側にバリがあるっぽい…。ひょっとしてこれでサイズが合わなくてはまらないのか?
予備のポリキャップはないので恐る恐るデザインナイフで内側を削っていく。
どうにかこうにか足首がはまって無事脚部が完成。最初力ずくで入れようとして尖った足先が指に刺さるなどして出血するなどしてそれはもう大変であった。
腰部装甲
1枚1枚瓦上のパーツを組み立てていく…。
終わった頃には瓦職人気分。
胴体部
下半身のパーツが全部揃ったので組み上げていくのだが…
と思った矢先に再びトラブル発生。今度は股のボールジョイントが腿のポリキャップにはまらないぞ。だがしかしこれはさっきも遭遇したのと同じ症状だ。と先程同様にポリキャップの内側を軽く削れば入…
ったけど今度はガバガバですぐに取れちゃうじゃねえか!
仕方がないのでダッシュでエポキシパテ買ってきて補強。
ボールジョイントを包み込むように…。
ちょっとガニ股になったけどなんとか自立できた。危うくジオング状態になるところでした。
腰部装甲をとりつけて遂に下半身完成。
調子に乗って上半身も付けてみたぜ。
腕部
さて、残りは腕と武器だ。
ここで、またしてもポリキャップ…、嫌な予感は的中。実は説明書の手順通りに腕を作ってから胸部に取り付けるのはトラップで、みんなここで詰むらしい。なので、先に胸部に腕のジョイント部を付けてから腕を組み立てるのが正解だ。フフフ、流石に3回も同じ罠にはハマらないぜ…。
と思っていたが腕のジョイント部をはめてもすぐに取れてしまう。これは軸の長さが足りてないのではないか…。ググると軸を継ぎ足して対策するとか出てきたけれども自分にはできそうもないので接着剤でガッチリ固定。肩が前後に動かなくてもいいじゃないか!
難所を力技で乗り越えたので腕の各パーツを作って…
くっつけて…
肩装甲を載せて完成。こんな腕絶対に後付だったら胸部に付けられません。100%ブチ壊れます。
全体部
ようやくここまで出来ました…。しんどかった。
見よ!この美しいフォルムを!(お股の白いパテはみなかったことにしてください)。
武器
最後は武器。
もう集中力が切れて接着剤はみ出たりしてどうしようもないが許せ…。
ポーズ付けてみた
完成したのでポーズ付けさせてみたぜ!
この2ポーズにするだけで動かす度に取れるパーツと格闘して1時間位かかった…。
比較してみた。
前回(1年近く前)に作ったRGエヴァ初号機と並べてみたところ。
作り終えて
最近のガンプラに慣れた身としては、久しぶりの接着剤やポリキャップ関連のトラブルに苦戦したものの、手間暇を経て完成させたかいもあって作り終えた後の満足感は非常に高い。ガレージキットで培った造形力が惜しみなく注ぎ込まれた製品なので完成後のスタイルも際立っており、原作のデザインの良さが立体化で損なわれていないのは素晴らしい。
惜しむらくはやはりポリキャップ関連の精度の低さ。そこまでして実現した可動域も耐久性が良いとは言えず、2ポーズ取るだけでもポロポロ取れるパーツと悪戦苦闘する必要があり、いっそのこと固定ポーズモデルとして出してくれても良かったのではと思うのは贅沢だろうか。
ガレージキットを作れる程の技量がなくても、ちょっと頑張ればここまでの完成度を楽しめるので、MHの造形に一度でも心を奪われたことのあるガンプラおじさんにはぜひチャレンジして貰いたい。
そんな訳で、今回は本当に
バンダイの技術力ってすげえなって思い知りました。