オッサンがバランス接続を試してみた
昨今、ハイレゾブームの影響なのか、はたまたイヤホン・ヘッドホンブームの影響なのか「バランス接続」や「バランス駆動」という言葉を目にすることが多い。オッサン位の年齢になると、人生を渡り歩く程度のバランス感覚はもちあわせているつもりなのだが…
バランス接続とは?
バランス接続は、ヘッドホンとアンプを左右チャンネルに2芯ずつ4芯のケーブルで接続します。
通常のアンバランス接続では3芯を使用し、1芯を左右のチャンネルで共用していますが、バランス接続では芯線の共有をしないため、左右の音の混濁が低減され、音像の定位が明確となる効果があります。
ポータブルヘッドホンアンプ SU-AX01 製品情報 | JVC
うーん、オジサンは芯と言うとシャーペンの芯位しか知らないのだけれども
普通よりも音が良くなるって感じ?
詳しい理屈を知りたきゃこの辺を読め。
【第106回】ヘッドホン/イヤホンの「バランス駆動」徹底解説!− 基礎知識から聴き比べまで一挙レポート (1/8) - PHILE WEB
第2回 よくわかる! デジファイNo.22付録ヘッドホンアンプ 【毎週火曜掲載】 | Stereo Sound ONLINE
なお、バランス接続じゃない普通の接続のことを「アンバランス」と呼ぶらしい。きっとケーブル1本で接続されて綱渡りのような状態で音が伝送されるからふらついちゃうんだよ、まるで社内の派閥争いに巻き込まれた昼間のお父さんの心境みたいだねとか余計な意味は全く無くて、ただ「バランスじゃない」から「アンバランス」なんだろうね。なんだかニュータイプに勝手にオールドタイプと呼ばれた人類みたいに思えて同情してしまった。
バランス接続の為の機材
さて、バランス接続で音楽を楽しむにはバランス接続に対応した機材が必要となる。
バランス接続対応ヘッドホンアンプ
まずはコレがなければ始まらない。ところが、そもそもバランス接続というのはハイエンドオーディオの世界のものらしく特にヘッドホンアンプについては
そこそこお高い。
つまりはカネの使い方のバランスがおかしい沼の住人の為のテクノロジーなのであるが、音楽離れした若者よりも多少はお金を持っているが自由に使えるとは限らないお小遣い制の中年男性をターゲットにしたバランス接続対応ヘッドホンアンプが存在するのだ。それがこの
昨今の雑誌の付録ブームもついにココまで来てしまったのだ。ていうか雑誌なのに定価5,500円(税込)という一桁違う価格設定なのであるが、そもそもバランス接続対応のヘッドホンアンプは安くても数万円するのであるからそれからしたら
なんと良心的なのだろうか。
ということで本屋で買ってきた。
なんと雑誌の厚みの半分以上は付録だ。
付録の箱を開けるとなかから小さな箱が。マトリョーシカ方式かコレは。
よかった。もう箱はなかった。
ということで、これが付録の「バランス駆動対応ヘッドホンアンプ」である。付録には基板しかないのだが、雑誌発行元のサイトで雑誌が何冊も買える値段の専用ケースも販売しているので、気に入ったら安心して末永く利用できるって訳さ。
しかもこのヘッドホンアンプ、バランス接続とアンバランス接続が聴き比べできる親切設計になっているのだ。
が、
バランス接続用のオペアンプは載っていない。
オペアンプとは?
そもそもオペアンプとは何でしょう? 簡単にいえば、電気信号を増幅するアンプ回路をひとつのモジュールにしたICです。電気信号を増幅する部分ですから、オーディオアンプにおいては心臓部、クルマでいえばエンジンといってもいいかもしれません。ちなみに、略さずに書くとオペレーショナルアンプとなります。
第3回 よくわかる! デジファイNo.22付録ヘッドホンアンプ【毎週火曜掲載】 | Stereo Sound ONLINE
今度のデジファイNo.22の特別付録「オペアンプ交換式バランス駆動対応ヘッドホンアンプ」では、このエンジンの部分を自分の好きなものに交換できるようにしてあります。
なるほど。好みのオペアンプを自分でチョイスできるようにあえて載せてないのだな。
とても親切じゃないか。
ということで、今回はアンバランスとの聴き比べをしたいので付録のアンバランス側に搭載されているのと同じ「OPA2134PA」を秋葉原の秋月電子で買ってきた。
ちなみに、オペアンプは一つ数百円から数千円という製品ごとに幅広い価格となっており、自分好みの音を求めて色々なオペアンプを購入するのもまた楽しみのひとつとなりそうである。但し、写真でわかるようにバランス接続のオペアンプは、左右のチャンネルそれぞれに必要となるのでオペアンプを2個買わなければならず出費は2倍となるのだ。ハイエンドへの道は険しい。
オペアンプの装着は向きに注意してソケットにはめるだけなのでとっても簡単であった。そう、
老眼でなければ。
バランス接続対応ヘッドホン
さて、これでバランス接続ヘッドホンアンプは準備が整ったが、そのヘッドホンアンプに接続するヘッドホン(イヤホン)もバランス接続に対応している必要がある。ということで
買ってきた。
本当は今迄の愛機であるオーテクの「ATH-W1000Z」でバランス接続を試してみたかったのだが、ケーブルが脱着式ではないので何かしら改造が必要になってしまう。でもって改造にはハンダコテとか使う必要があってそんなのは20年以上やったことないのでお父さん無理でーすと業者に頼もうとも思ったけどさらにお金も時間もかかりまーすということなので、
さようならATH-W1000Z、こんにちわMDR-Z7。
と下取りに出して中古でお迎えました。さて、今回バランス接続対応ヘッドホンとしてDR-Z7をチョイスした理由はATH-W1000Z購入時に最終候補として迷っていたというのも理由ではあるのだが
ケーブルが脱着式であることと、
バランス接続ケーブルが付属してること。
これ実は結構重要。世の中にはケーブル脱着式のバランス接続対応ヘッドホンはそこそこあるのだが、バランス接続ケーブルが付属しているヘッドホンは殆どない*1。しかもバランス接続はハイエンドの領域なので対応ケーブルもそこそこのお値段なのである。
勿論、今後音質を追求するのであればケーブル買い替えも検討しなければならないのが沼住人の運命ではあるのだが、とりあえずバランス接続ってどんなのよとわりとカジュアルに興味本位で試す時点でケーブルに数万円とか出してられっかということで父さんには大変ありがたいことである。
接続してみる
さて、これでバランス接続対応ヘッドホンアンプとバランス接続対応ヘッドホンが揃ったので接続してみようではないか。
- バランス接続対応ヘッドホンアンプ
- MDR-Z7のバランス接続用ケーブル
あらいやだ。端子の形が違うじゃないのよ。
そう、実はバランス接続は端子の規格化がつい最近まで決まっておらずメーカーによってまちまちなのであった。
クッソーこれではオレの目論見が全て水の泡となってしまうではないか。と
慌ててはいけない。
そういう人のためにこんなオプションが用意されているのだ。
ひとくちにバランス駆動タイプのイヤホン & ヘッドホンといっても、その接続に使われるプラグのカタチはさまざまです。そこでデジファイNo.22の特別付録「バランス駆動対応イヤホン&ヘッドホンアンプ」と合体させて使えるプラグ変換専用基板DF22-EXPをオプションとして用意しました。
基板上に設けられた4ピンの専用コネクターでNo.22の付録基板とダイレクトに接続すれば、4ピンのXLR端子、3.5mmの3極ミニ端子×2、アイリス端子、2.5mmの4極ミニミニ端子といった4種類のバランス駆動対応イヤホン & ヘッドホンを接続できるようになります。ヘッドホンアンプ基板本体の3ピンXLR端子×2と合わせれば、合計5種類のプラグに対応。すでにお手持ちのヘッドホンも、これから手に入れようとしているヘッドホンも、確実にバランス接続で使うことができるので安心です
さ、流石オレたちのDigiFi(今回初めて買ったけど)。
ということで購入。
開けたら
基板がドーン。
付録のバランス接続対応ヘッドホンアンプとドッキングして完成だ。フフフ。これで思う存分にバランス接続を堪能しようではないか。
聴き比べてみた
さて、いよいよ聴いちゃうぜ。
機器構成
- USB電源
いつもなら、モバイルバッテリーで試すところであるが、一応ちゃんと電源を使うことにした。Anker製品ならば充分な出力をしてくれるに違いない(上記リンクは後継製品)。
- USB給電ケーブル
- 出版社/メーカー: オウルテック
- 発売日: 2013/07/05
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログ (2件) を見る
いくらUSB電源が高出力であってもケーブルがダメなら意味がない。ということで安定のオウルテックの2.4A出力対応だ。
- USB-DAC(ポタアン)
DENON ポータブルヘッドホンアンプ ハイレゾ音源対応/USB-DAC搭載 プレミアムシルバー DA-10-SP
- 出版社/メーカー: デノン
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログを見る
今回はDSD再生も試してみたかったので、スマホからダイレクトではなくUSB-DACを経由することにした。愛用のDENONのDA-10である。圧縮音源含めたPCMも良い音で聴けるのでお気に入りである。
- オーディオケーブル
ソニー SONY ヘッドホンケーブル 1.2m ステレオミニプラグ MUC-S12SM1
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- 発売日: 2014/10/18
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログを見る
USB-DACとバランス接続対応ヘッドホンアンプをつなぐケーブルは自宅にある一番高価なヘッドホン用ケーブルにした。まあキモチの問題であるが高いほうが音が良いに違いない。
バランス接続対応ヘッドホンアンプとポタアンをステレオミニジャックでつなぐと、バランス接続対応ヘッドホンアンプ側のボリュームが有効になる(RCA入力時は無効化されるらしい)。幸いにも、DENONのDA-10は出力を「FIX」にすることでボリューム回路を無効化できるのだ。ポタアンなのにUSB-DACとしての利用も考えられているのは素晴らしい。
再生
今回は上記構成のDA-10に対して、Xperia Z3(SOL26)を接続して「Onkyo HF Player」を使ってMP3の圧縮音源とFLACのハイレゾ音源を複数、DSD変換無しと有りの2回で再生した。
- 出版社/メーカー: ソニーモバイルコミュニケーションズ
- メディア: Wireless Phone Accessory
- この商品を含むブログを見る
オーディオ&ビジュアル製品情報:Onkyo HF Player
- DSD変換なし
- DSD変換あり
それぞれを、MDR-Z7とバランス接続対応ヘッドホンアンプの接続ケーブルをアンバランスとバランスで切り替えて聴き比べする。
- アンバランス接続
- バランス接続
結果
うぉおおお。コレがバランス接続なのか!次元が違う!ま、まさに音の宝石箱やぁああああ(白目
という程まで違いはわからなかったが、ハイレゾ音源の聴き比べもまともに出来ないポンコツでも、流石にアンバランスとバランスの違いは実感できた。ポンコツ中年男性によるアンバランス接続とバランス接続の音の違いの感想を図で表現してみた。
- アンバランス接続
- バランス接続
バランス接続はアンバランス接続に比べて左右の分離は増すが(同じボリューム音量の)アンバランス接続のほうが密度が高く音に勢いがあるように感じられた。そのため、楽曲によってはバランス接続にするとアンバランス接続よりも大人しい印象となってしまう気がした。逆に、残響を意識させるような楽曲はバランス接続のほうが左右の広がりがでてくるので空間を意識できる気がした。
もっと直感的に例えるならば、アンバランス接続は若さ故にグイグイとアタックしてくる青年であり、バランス接続は豊富な人生経験の中で培った恋の駆け引きテクニックを駆使する中年のような余裕のある音。どうでしょう、
全く伝わらないでしょう?
最後にDSD変換有無による違いだが、アンバランス接続の時よりもバランス接続時のDSD変換のほうが(元の圧縮音源にもよるが)解像度が高くポンコツ耳でも明確に効果があるなと感じることができたので、これからバランス接続を聴くときにはDSD音源か非DSD音源をDSD変換して聴いたほうが幸せになれるのではないかなと個人的には思うのであるが、そうすると(DSD音源は持っていないので手持ち音源をDSD変換することになるので)夏休みの工作として作り上げたRaspberryPi3のDAPの出番が無くなる可能性が非常に高いのでそれはそれでちょっと複雑な気分である。
DigiFi(デジファイ)No.22(オペアンプ交換式バランス駆動対応ヘッドフォンアンプ特別付録) (別冊ステレオサウンド)
- 作者: 小原由夫,中林直樹,高橋健太郎,DigiFi編集部
- 出版社/メーカー: ステレオサウンド
- 発売日: 2016/05/30
- メディア: ムック
- この商品を含むブログを見る
今回はとりあえずバランス接続体験というレベルであって今後オペアンプやケーブルを取り替えればもっと違いを堪能できるのかもしれない期待感をもたせつつ、最終的には高級機を買えばいいのではと思わせるところが狡い大人のやり口に思えてオジサン嫌いじゃないです。ということで、しばらくは遊べそうな気がするのでその間にDENONさんには一刻も早くバランス接続対応のポタアンを発売して頂きたいなあ、ついでにDDFAとか搭載してくれねえかなあと心より思っております。
*1:MDR-Z7と「SOUND WARRIOR SW-HP20」位しか知らないだけかも