初老のボケ防止日記

おっさんのひとりごとだから気にしないようにな。

Bluetoothオーディオの仕組み

以前からBluetoothのヘッドホンやスピーカーを利用しているのだが、実際にどのように音が再生されているのかをよくわかっていなかったのでふと気になって調べてみた。

Bluetoothとは

「Bluetooth」とは数メートルの近距離を無線で通信する規格のこと。無線で通信する規格と言えば「Wi-Fi*1」が有名だが、同じ無線でも規格が異なる。

種類 速度 範囲 消費電力 主な用途
Wi-Fi 速い 広い 高い ネットワーク通信
Bluetooth 遅い 狭い 低い 機器同士の接続

LANケーブルの代わりになるのがWi-Fi、マウスやキーボード、イヤホンなどの機器同士を接続するケーブルの代わりになるのがBluetoothと思っておけば、普通に利用する分には問題はない。

Bluetooth対応のオーディオ製品

Bluetooth経由で音楽を聴く場合、次の3つがBluetooth対応のオーディオ製品として思い浮かぶ。

  • イヤホン
  • ヘッドホン
  • スピーカー

これらは全てBluetooth経由で音を受信する機能をもつ製品で「Bluetoothレシーバー」とも呼ばれる。これらの製品を、スマートフォンなどのBluetooth経由で音を送信する機能を持つ製品と接続して利用することでBluetooth経由で音を再生することができる。後者の製品は「Bluetoothトランスミッター」とも呼ばれる。

機能 役割 主な製品
トランスミッター 音楽を再生して音データを配信する スマホ・DAPなど
レシーバー 音データを受信して音を出す イヤホン・スピーカーなど

ここまでの内容で"Bluetoothを使うことで、スマホとイヤホンを結ぶケーブル部分の有線区間が無線区間になるのだな"と思ってしまったそこの貴方、


オーディオはそんな簡単なものではないッ!

突然キレる意味が不明だし多分きっと更年期なのかもしれないけれども、ひとまずBluetoothオーディオから離れてデジタルオーディオの仕組みから見ていこう。

デジタルオーディオの仕組み

1980年代に登場したCD以降、音楽はデジタル形式で提供されるようになった。デジタル形式で提供される音楽は、次の3つの機能を経由した後にイヤホンやヘッドホン、スピーカーを通じて人間の耳に聴こえるようになる。

トランスポート

一般的にCDプレーヤーやスマホやPCの音楽再生アプリを指す。次の工程を担う「DAC」にデジタル形式のデータを運ぶ役割を指すので「トランスポート」とか「トランスポーター」とか「トラポ」とか呼ばれているっぽい(正式名称は不明)。

DAC(ダック)

正式名称は「デジタルtoアナログコンバーター」。その名の通り、デジタルデータをアナログ信号に変換する。

AMP(アンプ)

DACが変換したアナログ信号をヘッドホンやスピーカーで再生可能な信号に増幅する。

これらの機能は当然スマホやPCにも含まれており、そのおかげで単体で音楽を再生することができる。これらの機能のうち「DAC」と「AMP」は音質に大きく影響する機能であり、一般的にはオーディオに特化した専用製品に搭載されている機能のほうがスマホやPCに含まれている機能よりも性能が良いので音質は良い。
そのため、音質に拘りだすと高いイヤホンやヘッドホンだけでは満足できずにポータブルアンプをつなげて音楽を聴いたり、スマホとは別にウォークマン等の専用DAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)を使うようになるのだ。そしてさらなる高みを求め据え置き機器、さらにもっと高価なハイエンドに...。嗚呼、沼は恐ろしい…。

取り乱しました。それでは、これらの機能を用いて具体的にどのように人間の耳に音が届くまでをいくつかのパターンごとに見ていこう。

CD再生

今となっては珍しい音楽CDからの再生パターンであるが、シンプルなのでまずはこれをベースに説明したい。

音楽CDには「PCM」と呼ばれる形式の音源データが収録されている。"トランスポート"が音楽CDから読み出したPCM形式のデータは、"DAC"によってアナログ信号に変換される。DACが変換したアナログ信号は"AMP"によって増幅され、イヤホン・ヘッドホン、スピーカーで再生されて人間の耳に音が聴こえる。

DAP再生

続いて、現在主流であるスマートフォンやウォークマンなどのDAPで圧縮音源を再生するパターン。なお、定額制音楽配信サービスで音楽を聴く場合も"トランスポート"である専用アプリがインターネット経由で圧縮音源をダウンロードする手順が増えるだけで基本的にはこれと同じと考えてよい。

「圧縮音源」とは、CDに収録されているPCM形式のオリジナルデータを圧縮しデータサイズを小さくした音源データだ。オリジナルデータから圧縮音源に変換する際に利用される圧縮/復号方式は「コーデック」と呼ばれ、コーデックはMP3,AAC,FLAC等様々な方式が存在する。どうして圧縮するのかというと、CDに収録されているPCM形式のデータはサイズが大きすぎるのでそのままでは保存やネットワーク経由でのやりとりに不向きである為だ。

"トランスポート"は圧縮音源をPCM形式に復号してからDACに引き渡す。これは"DAC"が圧縮音源を直接アナログ変換できないからだ。その後の流れはCD再生と同じ。

DAPでBluetooth再生

最後に、先程のDAP再生のイヤホンがBluetoothイヤホンになったパターンである。図中の下にある四角「Bluetoothイヤホン・ヘッドホン」はBluetoothイヤホンの受信部だと思ってほしい。

"トランスポート"からのPCM形式のデータはDACではなく"Bluetooth送信部"に渡される。Bluetooth送信部は、PCM形式のデータを特定のコーデックで圧縮した後に、Bluetooth経由で受信機器側の"Bluetooth受信部"に対して配信する。Bluetooth受信部は、Bluetooth経由で受信した圧縮データを送信側と同じコーデックを使ってPCM形式のデータに復号する。復号されたPCM形式のデータは受信機器側の"DAC"でアナログ変換され"AMP"を経由してイヤホン・ヘッドホン、スピーカーで再生されて人間の耳に音が聴こえる。
つまりは、Bluetooth経由の場合は受信側の”DAC”と”AMP”が使われる。イヤホンのケーブルがBluetoothに変わっただけなのにどうしてこんなに手順が異なるのだろうか。その理由は"Bluetoothが転送できるのはデジタル形式のデータ"だからだ。

今まで説明してきた通り、デジタルデータが人間の耳に聴こえるようになるにはどこかで必ずDACとAMPを経由する必要がある。受信機器側はアナログではなくデジタルでデータを受信するのだから、受信側にDACとAMPがないと人間の耳に聴こえるようにならないので、必ず受信側のDACとAMPを経由するはずである。 では、送信側のDACは本当に経由しないのだろうか。これについては実のところ確証はないのだが以下のことから送信側のDACは経由していないであろうと推測した。間違ってたらごめんなさい。

  • ペアリング後のBluetoothオーディオはOSからはただのオーディオデバイスとして見える*2
  • AMPの次にBluetooth送信部が来ると再度デジタルに変換してやる必要がある*3

Bluetoothオーディオの品質を決めるポイント

ということで、まとめ。
今まで、Bluetoothオーディオの品質を決めるのはイヤホン・ヘッドホンは勿論として、SBC,AAC,aptXなどの「転送時のコーデック」が重要であると思っていた。しかしながら、今回理解を深めたことで受信側の「DAC」と「AMP」も重要なポイントであることがわかった。

ということで、次回は今回の考察を踏まえたBluetoothオーディオの選び方的な記事を書くかもしれない。

*1:実際はブランド名であって、規格名は「IEEE 802.11」。

*2:トランスポート側からすれば内蔵オーディオもUSB-DACもBluetoothオーディオも同列なので出力先としてPCMが流せるはず

*3:無駄な処理が増えるということはバッテリー使うし遅延も増えるからデメリットでしかないので特別な理由でもない限りやらないと思う。