初老のボケ防止日記

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【予算別】Apple Musicのロスレスを楽しむのにオススメな構成(中級)

「Apple Music」のロスレス対応に伴い、これまでBluetoothイヤホンで音楽を聴いてれば充分だと思っていた人達も"せっかく聴けるなら良い音で聴いてみたい"と思っているようので、予算別にオススメ機材とかを書いてみました。(今回は中級編)


前回の記事はこちら。

osa030.hatenablog.com

次の表は、「Apple Music」が提供しているロスレス以上の楽曲の"音質"とMusicアプリの"表示"の対応です。

音質 表示
44.1kHz / 16bit ロスレス
44.1kHz / 24bit ロスレス
48.0kHz / 24bit ロスレス
88.2kHz / 24bit ハイレゾロスレス
96.0kHz / 24bit ハイレゾロスレス
192.0kHz / 24bit ハイレゾロスレス

音質の数値は、音をデジタルデータとしてどれだけ精密に記録しているかを表しています(興味のある人は「Denon公式ブログの記事」とかを見るとわかりやすいかと思います)。ざっくり"「kHz」と「bit」をかけ合わせた値が大きい方が音質が良い"程度の理解で問題ありません。つまり、上記の一覧では上から下に向かって順に音質が良くなっていることになります(一番上はCDと同じ音質です)。

ここで言う音質とは、データとしての話であって収録時の録音状態が優れた作品やマスタリングが優秀な作品のもつクオリティを損なうことなく再現することはできても、そもそもが残念な作品については音質を良くしたところで必ずしも心地良く聴ける訳ではない点に注意しましょう。

さて、前回の記事の最後にさらっと書いた

なお、この組み合わせで忠実に再生できるのはAppleが言うところの"ロスレス"な「48.0kHz / 24bit」までの音質です。CD音質は問題なく楽しめますが、それ以上の音質である”ハイレゾロスレス”(「88.2kHz / 24bit」~「192.0kHz / 24bit」)を再生しても忠実に再生されません。

【予算別】Apple Musicのロスレスを楽しむのにオススメな構成(初級) - 初老のボケ防止日記

となるのは一体どうしてなんでしょう。その謎を解くために、デジタルオーディオの仕組みを理解するとしましょう。次の図は、PCやスマホ、ウォークマンなどのデジタルデータの楽曲を再生する機器(このような機器を"デジタルオーディオプレーヤー(DAP)"と呼びます)で楽曲を再生して実際に音が耳に聴こえるまでの流れをイメージ化したものです。

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ざっくり言えば、デジタルデータの楽曲を人間の耳が理解できるアナログ信号に変換するのが「DAC」、変換されたアナログ信号を人間の耳に聴こえる音量に増幅するのが「AMP」です。PCであれスマホであれ、再生した楽曲がスピーカーやイヤホンジャックを通じて耳に聴こえる迄には必ずこの「DAC」と「AMP」を経由します。「DAC」の処理能力には上限があり、能力以上の音質のPCMデータを受け取っても自分の能力以上の処理はできません。

実は、「Apple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」の中にも「DAC」と「AMP」が含まれていて、iOSデバイスと接続した状態で楽曲を再生すると本体からアダプタにPCMデータが渡されアダプタ内部でこの変換を行っています。つまり、「Apple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」の中の「DAC」の性能が「48.0kHz / 24bit」迄しか処理できないのでそれ以上の音質のPCMデータを流しても「48.0kHz / 24bit」迄でしか変換できないのです。

では、ハイレゾロスレスの楽曲を忠実に再生するにはどうすればいいのか。

To listen to songs at sample rates higher than 48 kHz, you need an external digital-to-analog converter.

About lossless audio in Apple Music - Apple Support

Appleサポートの記述の”digital-to-analog converter”が「DAC」です。世の中には、PCやスマホにUSBで接続して利用する"USB-DAC"と呼ばれるオーディオ機器が存在します。つまり、iOSデバイスに「Apple Music」が提供するハイレゾロスレス最大音質である「192.0kHz / 24bit」迄を処理できる性能を持った"USB-DAC"を接続して楽曲を再生すれば解決です*1

”USB-DAC”は、"ポータブル型"と"据え置き型"の2種類があります。ポータブル型は、小型で外部電源も不要なので持ち運ぶことができます。ポータブル型のUSB-DACには「AMP」も含まれているので「ポタアン(ポータブルアンプ)」とも呼ばれます*2。据え置き型は、その名の通り持ち歩きを想定していないのでそれなりに大きく、サイズ制約が無いぶんポータブル型より音質面は優位ですが一部の機器を除いて外部電源が必須になります。

さて、理解が深まったところで本題にはいりましょう。

予算別オススメ

3万円以内

  • Lightning - USBアダプタ

"USB-DAC"は、その名の通りUSB接続できるオーデイオ機器なのでiOSデバイスのLightningポートに直接接続することはできません。そのために変換アダプタを購入する必要があります。

Apple純正以外に動作するものも存在しますが、それほど価格差はないので安心の意味で純正を買っておきましょう。

音楽を再生しながら充電もしたいという場合は、こちらを利用しましょう。

ここまでで3,000~5,000円程度。

  • USB-DAC

今回は予算でポータブル型をチョイスしました。

SHANLING(シャンリン)は中国のオーデイオメーカーで、日本ではデジタル・オーディオ・プレーヤーのメーカーとして知られています。世間では未だに中国製品は安かろう悪かろうのイメージが強いですが、実際は斜陽産業となってしまった国内メーカーよりも勢いがあり、技術的にも侮れません。特にSHANLINGはイヤホン専門店や家電量販店でも取り扱いがあるので、販路がネットだけのよくわからないメーカーの製品よりも手を出しやすいと思います。

UA2」に搭載されているDAC(DACチップ)は、「768kHz / 32bit」迄の音質に対応しているので「Apple Music」のハイレゾロスレスも再生できます。AMPも使用している部品(オペアンプ)を明記してアピールしていることからロスレスの楽曲であっても「Apple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」よりも間違いなく良い音で聴けると思います(値段が10倍違うので流石に変わらないということはないでしょう)。

また、本製品は購入特典として"USB-TypeC to Lightning ミニケーブル"が付属してきます。数量限定なので必ずついてくる訳ではありませんが、その場合は「Lightning - USBアダプタ」は不要なのでお得感があります*3。最後に「Eddict Player」というメーカー提供のアプリを使えば、DACの設定も弄ることもできるようですが、残念ながらAndroidのみでiOSはOSの制約からできないとのことです。

ここまでで最大18,000円程度。

  • ヘッドホン

初級編では予算の都合上イヤホンを薦めましたが、ロスレスを楽しむのは基本的に室内環境だと思うので、特に拘りがないのであればイヤホンではなくヘッドホンをオススメします(イヤホンを長時間付けた時の耳の圧迫感が不快というのが一番の理由です)。1万前後の予算であればこれを買っとけば間違いないと思います。

Creativeは、PC向けの「Sound Blaster」でお馴染みのシンガポールのオーディオメーカーですが、「Aurvana Live! 」は日本のフォスター電機がOEMで作っています(フォスター電機は自社ブランド「FOSTEX」が有名ですが世界の様々なメーカーの製品をOEMで作っており、iPhone付属のイヤホンもフォスター電機製です)。見た目とは裏腹に、1万以上のヘッドホンに引けを取らない鳴りっぷりで知られており、見た目に妥協できるのであれば是非オススメします。但し、純正イヤーパッドはチープかつ付け心地が微妙なのでサイズが合うオーディオテクニカの「ATH-WS660BT」のイヤーパッドに変えて使いましょう。

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イヤーパッドをオーディオテクニカの「ATH-WS660BT」に交換済の「Aurvana Live! 」。耳全体が覆われるので長時間付けても疲れません。

ATH-WS660BTの部品/付属品|株式会社オーディオテクニカ

ヘッドホンが6,000円でイヤーパッドが2,200円と送料660円、合計9,000円弱。

5万円以内

USB-DAC以外は3万以内と同じです。

  • USB-DAC

予算を2万増やすと据え置き型が選択肢にあがります。

iFi Audioはイギリスのオーディオメーカーです。ポタアンからハイエンド迄幅広く手掛けています。この「ZEN-DAC」は比較的最近発売された製品で、iFi Audioの据え置き型USB-DACがこの値段で買えるのは正直驚きです。勿論、「Apple Music」のハイレゾロスレスも再生できる「384kHz / 32bit」迄処理できるDACチップを搭載していますし、RCA出力も備えているので手持ちのオーディオやアクティブ・スピーカーにつなげて音を出すこともできます。
本製品は、接続元機器からの電源供給でも動作することから、電源アダプターが付属していません。iOSデバイスで利用する場合は電力供給が不安ですし、電源はオーディオの基本なので是非とも電源アダプターを繋げて使いましょう。

こちらが純正電源アダプターです。価格はプレミアム価格ではなく定価です。電源アダプター単体で7,500円というのはにわかには信じられないことかもしれませんが、製品HPを見る限りかなりこだわった製品のようですので、ここは単体価格を見なかったことにしましょう。USB-DAC本体とセットで3万以下と考えればむしろお買い得です

これで「Apple Music」を最大限まで楽しめるようになりましたね。え?さらなる高みを求めたいですって? 


ようこそ沼の世界へ。


続く。
osa030.hatenablog.com

*1:結局「Apple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」は「48.0kHz / 24bit」迄を処理できるUSBLightning-DACだったということです(ただの変換ケーブルのくせに1,000円するのはボッタクリではなかった訳です)

*2:過去にポタアンブームがあったので、割と中古で出回っています

*3:MFI認証を通していないケーブルなのでiOSアップデートで使えなくなる可能性もありますが、その場合は「Lightning - USBアダプタ」経由で使いましょう