Bluetoothオーディオの選び方
最近のスマートフォンにはイヤホンジャックがついてないことが多く、音楽を聴くにはBluetooth対応のヘッドホンやイヤホン、スピーカー(以下、Bluetoothオーディオ)を使うことが一般的になりつつある。
今回はBluetoothオーディオを選ぶときのポイントを雑にまとめてみた。
はじめに
今回の記事では以下については言及はしない。
- 完全ワイヤレスイヤホン(TWS)
- apt-X HD,LDAC等のハイレゾ相当のBluetoothコーデック
言及しない理由は自分で使ったことがない為。TWSについては興味はあるのでそのうち入手したらレビュー記事を書く可能性はあるのだがハイレゾ相当のコーデックはそもそもハイレゾやロスレスと言った音源の違いがわからないので…。
本題
前回の記事では
Bluetoothオーディオの品質を決めるのはイヤホン・ヘッドホンは勿論として、SBC,AAC,aptXなどの「転送時のコーデック」が重要であると思っていた。しかしながら、今回理解を深めたことで受信側の「DAC」と「AMP」も重要なポイントであることがわかった。
Bluetoothオーディオの仕組み - 初老のボケ防止日記
と書いたのだけれども、じゃあ具体的にBluetoothオーディオ製品を選ぶ時に混乱させる原因となるのが次のふたつのキーワードだろう。
- Bluetoothバージョン
- Bluetoothコーデック
まずはこのふたつについて雑に説明してみる。
Bluetoothバージョン
”普通に店で新品で売られている製品なら特に気にしないでOK”
前回の記事で説明した通り「Bluetooth」というのは、無線の通信"規格"である。規格が策定されたのは1999年なのでそこそこ歴史が古い上に、オーディオ以外の様々な用途で用いられているので時代と共に仕様が更新されてきた。更新したことがわかるよう仕様の改版に伴ってバージョンを示す番号が付与されており、2018年11月時点で最新バージョンは5になっている。
「じゃあ、最新のバージョンのほうがいいではないか」と思われがちであるが、Bluetoothの仕様のうち、オーディオに関する仕様はかなり前から変更がない上に、現在販売されている製品の殆どは4.x以降のバージョンなのでそれを買っておけばまず問題ない。ただし、新しいバージョンの製品のほうが新しい部品を搭載しているので音飛びや消費電力などで違いはでてくる可能性はある。
Bluetoothコーデック
"iPhoneはSBCとAACのみ、AndroidはSBC以外は端末次第"
こちらも前回の記事で説明した通り「Bluetoothコーデック」とはBluetooth経由で音を転送する時に使う圧縮方式を指す。Bluetoothの仕様上はPCM形式のデータを送ることも許容されているようなのだが、現実の電波状況等では実用に耐えうる品質とはならないので圧縮・復号は必須となっている。この圧縮・復号の手順(と転送速度の遅さ)がBluetoothオーディオ経由で動画を見たりゲームをプレイしたときの遅延の原因だ。
現時点(2018年11月)でBluetoothオーディオが利用可能な主なコーデックと、送信側として用いられるスマートフォンのOSごとの対応状況は以下の通り。
コーデック | iOS | Android | 備考 |
---|---|---|---|
SBC | ○ | ○ | どの製品も必ず対応している |
AAC | ○ | △ | SBCよりも品質が良いとされる |
aptX | × | △ | AACよりも品質が良く低遅延 |
aptX HD | × | △ | ハイレゾ相当品質(らしい) |
LDAC | × | △ | ハイレゾ相当品質(らしい) |
※ "△"は機種やOSのバージョンによって対応状況が異なることを示す。
まとめると、iOSは「SBC」か「AAC」のみ利用でき、Androidは「SBC」なら間違いなく利用できるがそれ以外は機種次第となる*1。 なお、コーデックの品質には下に行けば行くほど良いとされるが、コーデックだけが音質の良し悪しを決めている訳ではないのは前回の記事の通りだ。同じ価格帯のBluetoothオーディオ製品を比べた場合に「AAC,aptX対応のA社の製品よりもSBCしか対応していないB社の製品のほうが音がよい」ということもよくあるので、音質に拘りたい人はコーデックだけで判断せずに店頭で試聴することをオススメしたい。 Bluetoothオーディオ特有の”遅延”に関しては、コーデックによって理論上は変化するので、音質よりも遅延を重視するならaptX、またはさらに低遅延なaptX LL(Low Latency)を選ぶと良いだろう。ただ、遅延の感じ方も用途や聴く人の感性によることは伝えておきたい。
その他のポイント
上記の2点さえ理解すれば、後は自分の気に入った製品を選べばOKなのであるが、個人的には他にも気にするポイントがある。それは以下の2点だ。
- マルチペアリング
- アップスケーリング
マルチペアリング
"繋ぐ再生機器が複数ある場合はマルチペアリング大事"
Bluetoothオーディオを利用するには送受信側で「ペアリング」という儀式が必要になる。
ペアリングは基本的には機器同士を使う時に1回だけ行うのだが、Bluetoothオーディオ製品によっては1台分しか記憶できないものがある。常に1台のスマホしか使わない人は特に問題はないのだが、外ではスマホ、家ではタブレットをBluetoothヘッドホン・イヤホンに繋げて利用するパターンや、家族で1台のBluetoothスピーカーを共有する場合には毎回ペアリングし直す必要があり、特に後者は手順を覚えてない家族の対応が面倒だ。
「マルチペアリング」に対応した製品は、複数の機器間のペアリングを記憶できるので、各機器とのペアリングは1回だけですむので便利である。 ただ、マルチペアリングはすべての製品で明記されていないので中々わかりにくいのだが、経験則的に安い製品は対応していないことが多い。
アップスケーリング
"サブスクを良い音で聴きたい人にはアリかも"
今時はサブスクと呼ばれる定期購読契約の音楽配信サービスを利用している人も多いと思うが、一部のサービスを除きCDに収録されたオリジナル音源から不要と判断された音を削除した圧縮音源として配信されている(これを不可逆圧縮とかロッシー圧縮と呼ぶ)。それらの音源をBluetoothオーディオで聴く場合はさらにBluetoothコーデックで一部の音を削除して転送されるのでSBC,AAC,aptXを使った場合の音質の劣化は避けられない(Bluetoothコーデックもまた不可逆圧縮)。
一部のBluetoothオーディオには、受信した音源を再生前に高品質にアップスケーリングする機能を持つ製品も存在しており、SONYの「DSEE HX」やJVCケンウッドの「K2」という機能がそれにあたる。
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- 発売日: 2017/10/07
- メディア: Personal Computers
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JVC HA-FD70BT ワイヤレスイヤホン 高音質化技術 K2テクノロジー搭載/連続7時間再生/Bluetooth・NFC対応/ネックバンド/ステンレスボディ ブルー HA-FD70BT-A
- 出版社/メーカー: JVCケンウッド
- 発売日: 2017/11/09
- メディア: エレクトロニクス
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JVC HA-FX99XBT ワイヤレスイヤホン XXシリーズ/重低音/高音質化技術 K2テクノロジー搭載/連続8時間再生/Bluetooth対応/ネックバンド HA-FX99XBT
- 出版社/メーカー: JVCケンウッド
- 発売日: 2017/11/09
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なお、「DSEE HX」はSBC,AACのときしか有効にならないし「K2」搭載製品は現状aptXまでのコーデックしか対応してない。aptX HDやLDACで転送してアップスケーリングしたら最高じゃねえかと素人的には思うのだけれども、それをしないのは大人の事情なのか費用対効果がないせいなのかは謎である。
最後に
ということで、Bluetoothオーディオ製品を選ぶときのポイントを雑にまとめてみた。スペックが複雑な上に様々な製品が販売されているので選ぶのが難しいように思えるが、送信側の製品や用途で必要な機能は定まるので後は予算に応じて絞り込めばそれほど迷わずに選べることはできると思う。ただ、前回の記事でも書いたとおりスペックだけで音は決まらないのがオーディオなのでできるだけ店頭で試聴して気に入った製品を購入することをオススメしたい。
*1:Android 8.0以降はaptX/aptX HD/LDACがサポートされたが、対応するかどうかはメーカーに委ねられており実際に対応しない製品も存在する