初老のボケ防止日記

おっさんのひとりごとだから気にしないようにな。

「Apple Music」と「Amazon Music HD」のロスレスを聴き比べてみた。

GAFAのGF抜き、つまり漢同志のステゴロ対決ですわ。

「Apple Music」の価格据え置きでのロスレス対応に伴い、先行していた「Amazon Music HD」が価格値下げで対抗するなど、これまでマニアしか興味のなかった高音質な音楽配信が熱い。自分としては今年後半に開始予定の「Spotify HiFi」が本命のつもりだったのだが、価格競争に突入している現状ではSpotifyさん、

このままじゃシマ奪われますで?

とか心配してたら

Apple MusicのロスレスとAmazon Music HDのUltra HDどっちが音がいいか確認後、ご報告いただけると幸いです⊂( (・x・))⊃

という指令お題が出たので、「Apple Music 」と「Amazon Music HD」を聴き比べてみることに。

サービス概要

まずはそれぞれのサービス概要をざっくり比較

項目 Apple Music Amazon Music HD
配信楽曲数 7,500万 7,000万
ロスレス楽曲数 2,000万程度(最終的には全て) 6,500万以上
ロスレス音質 「44.1kHz / 16bit」~「192.0kHz / 24bit」 (同左)

"配信楽曲"は若干「Apple Music」が多いが、「Amazon Music HD」も困ることはないレベル(「Spotify」も7000万程度らしい)。うち、ロスレス楽曲数は「Apple Music」は開始当初2,000万程度で最終的には配信楽曲全てを対応するらしい。「Amazon Music HD」は現時点で6500万曲以上がロスレス配信となっているそうだ(うち数百万曲がハイレゾ)。

ロスレスの音質は曲によって異なるが、どちらもCD音質の「44.1kHz / 16bit」から「192.0kHz / 24bit」を上限とするハイレゾ音質までとなっている。なお、この音質に関するカテゴリ付けが両サービスで異なるのでそこは注意したい。

音質の種類と各サービスでの呼称

音質 JEITA Apple Amazon
44.1kHz / 16bit CDスペック ロスレス HD
44.1kHz / 24bit ハイレゾ ロスレス ULTRA HD
48.0kHz / 24bit ハイレゾ ロスレス ULTRA HD
88.2kHz / 24bit ハイレゾ ハイレゾロスレス ULTRA HD
96.0kHz / 24bit ハイレゾ ハイレゾロスレス ULTRA HD
192.0kHz / 24bit ハイレゾ ハイレゾロスレス ULTRA HD

「Apple Music 」では、純正「Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」経由を含め、本体のイヤホンジャックにヘッドホン/イヤホンを接続して再生できる音質を”ロスレス”と称している。一方、「Amazon Music HD」はCD音質である"44.1kHz / 16bit"を”HD”、それ以上の音質を”ULTRA HD”と称しており、これはJEITA(電子情報技術産業協会)が定義した区分と一致している。Apple 、

そういうとこだぞ。

なお、そもそも”音質”って何よ?って人は、以下のリンクをみるとそれっぽく理解できるのではないかと。

超初心者のための「ハイレゾって何?」そもそも編 | Denon 公式ブログ

聴き比べ

さて、本題の聴き比べだ。

試聴曲

ロスレスで提供されている音質を網羅するよう、両サービスで普段聴いているアーティストの楽曲を探してみたのだが、なかなか音質が揃わないので結構難儀した(2曲揃わなかったが諦めた)。

アーティスト 楽曲名 Apple Music音質 Amazon Music HD音質
The Winery Dogs Oblivion 44.1kHz / 16bit 44.1kHz / 16bit
Daft Punk Instant Crush 44.1kHz / 24bit 48.0kHz / 24bit
Red Hot Chili Peppers Dark Necessities 48.0kHz / 24bit 48.0kHz / 24bit
GoGo Penguin Raven 88.2kHz / 24bit 44.1kHz / 16bit
Maroon 5 She will be loved 96.0kHz / 24bit 96.0kHz / 24bit
Coldplay In My Place 192.0kHz / 24bit 192.0kHz / 24bit

同じアーティストの楽曲だからといって、必ずしも各サービスで同じ音質で楽曲提供されているようでもないらしい。

試聴環境

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機材 製品 備考
再生機 Apple iPhone8 純正Lightning - USBカメラアダプタ
USB-DAC RME ADI-2 Pro FS 純正USBケーブルで接続
ヘッドホン Fostex TH909 リケーブル

これまでのリスニング環境と比較するとかなりシンプルな構成になっているが、「Apple Music」をビットパーフェクトで再生するにはこうするしかない。

聴いてみた

両サービスで上記楽曲のプレイリストを作り交互に聴いてみたところ明確に音は違うというのは感じられなかったのだが、衝撃の事実が判明。なんと「Amazon Music HD」は音源そのままの音質で再生されない。全ての曲が「192.0kHz / 24bit」にアップサンプリングされた状態でUSB-DACに送信されるのだ。

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レッチリの「Dark Necessities」を「Amazon Music HD」再生中。

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「ULTRA HD」をタップすると音質関連情報が表示され、”再生中の音質”は”楽曲の最大音質”と同じ「48.0kHz / 24bit」なのでこれだけ見るとビットパーフェクトで再生されているように見えるのだが…

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USB-DAC「RME ADI-2 Pro FS」側の受信情報(液晶右下)ではサンプリングレートが「192.0」。つまり”再生中の音質”ではなく”端末の性能”である「192.0kHz / 24bit」で送られてきてますよってこと(ビット深度は表示されないので不明)。

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今度は、同じ曲を「Apple Music」再生中。

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「ロスレス」をタップすると品質情報が「48.0kHz / 24bit」と表示される。これが再生中の音源の音質だと思っている(前述の表もここの値を参照している)。

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USB-DAC「RME ADI-2 Pro FS」側の受信情報(液晶右下)ではサンプリングレートが「48.0」。つまり品質情報と一致するのでビットパーフェクト(なはず)。

今回の聴き比べ対象ではない「TIDAL」や「mora qualitas」についてもiOSの再生を試してみたが、再生楽曲の音質に合わせて受信側USB-DACに表示されるサンプリングレートが変化する。つまりは

「Amazon Music HD」アプリが糞。

そんな訳で、ビットパーフェクトではないと知ってしまったがためになんとなく「Amazon Music HD」は全ての曲が(「192.0kHz / 24bit」にアップサンプリングされているおかげで)解像度が高い気がするけれど(どうせスッカスカなアルゴリズムでアップサンプリングしてんだろうから)ちょっと輪郭がボケてアタック感が損なわれている感じがしないでもないなー、とか思い出してしまった。

人間の思い込みって怖いですね。

このまま終わるのも面白くないので、「Amazon Music HD」がアップサンプリングしないでろう、端末の性能と楽曲の最大音質が同じ「192.0kHz / 24bit」の曲を探して聴き比べしてみた*1

アーティスト 楽曲名 Apple Music音質 Amazon Music HD音質
The Doobie Brothers Long Train Runnin' 192.0kHz / 24bit 192.0kHz / 24bit
Coldplay Speed of Sound 192.0kHz / 24bit 192.0kHz / 24bit

この条件で聴き比べした結果…

全く違いはわかりません。

サービス側でレーベルからのマスター音源をいじっていると言う噂をよく耳にするので、それぞれ音色が違うと思っていたのだが今回聴いた2曲に限って言えば、10秒位の区間で切り替えて聴いても全く違和感がないのだからお手上げ。さて、音質に関しては「192.0kHz / 24bit」ということもあり、空気感というかColdplayの曲のラストのギターの不安定さがめちゃくちゃしっかりと聴こえていたのはちょっと衝撃的であった。新田恵利とか安田成美とか仲村トオルを聴いたらどうなってしまうんだろうか。ユニコーンのギターは間違いなくスリリング だろう。

結論

正直な話、BGMとして聴き流すだけならどちらも充分良い音だ。ただ、原音に忠実さを求めるなら少なくとも「Amazon Music HD」はビットパーフェクトで再生できる環境がかなり限定的なので「Apple Music」のほうがいいと思う。逆に忠実さは不要で気持ちよくスピーカーで高音質が楽しめればというのであれば、手持ちの機器で気軽に再生できるほうを選べばいいのではないだろうか。 但し、「Apple Music」をAirPlay経由でオーディオ機器で再生する場合は、現状のAirPlay2の規格ではハイレゾはダウンサンプリングされてしまうので今回の聴き比べとは逆に「Apple Music」の一定以上の音質はダウンサンプリングされることにはなることは注意されたい*2

*1:「Apple Music」はまだ「192.0kHz / 24bit」が少ないのか両サービスで最高音質な曲を探すのはかなり大変だった。USB-DACを使うユーザ層は正直Apple的に求めてなさそうなので力を入れていない可能性もあるが…

*2:つまりビットパーフェクトで再生できないという話なのだが、上の音質から下の音質に落とす分にはそこまで気にしないでいいのかもしれない