「ネットワークストリーマー」(iFi audio "ZEN Stream")を買いました
前回「ネットワークストリーマー」を自作してたのに...。
製品発表時点でかなり気になってた「ZEN Stream」、国内販売日がなかなか決まらなかったのでその繋ぎとして自宅に余ってるラズパイで「ネットワークストリーマー」作って発売迄使おうと思ってたら突然発売日が決まってしまい…。
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- 「ネットワークストリーマー」(iFi audio "ZEN Stream")を買いました(本記事)
そんな訳で…私、
ラズパイオーディオ、卒業します。
「ZEN Stream」って何?
英国のオーディオブランド「iFi audio」が今年発売したネットワークストリーマー。自家製ネットワークストリーマーで出てきた「Volumio」をベースとして開発されているのが特徴。つまり、めっちゃ高いラズパイオーディオと言っても過言ではないのだが、中の基板は”ラズパイ”という訳ではなくて、オーディオ的に拘り抜いた設計とパーツ選定の上にiFiのノウハウを注ぎ込んで作られております。
- ZEN Stream by iFi audio - The high-performance, flexible and affordable Streamer from iFi audio (iFi audio公式製品HP)
- ZEN Stream | iFi audio 日本語ブランドサイト (国内代理店製品HP)
正直よくわからんけどもラズパイの10倍のお値段なんだから音が良いに決まってます。
何ができるの?
主要なサブスク音楽配信サービスに対応。
- Spotify Connect
- TIDAL Connect
- DLNA
- AirPlay
- Chromecast(今後のアップデートで対応)
その他にもRoon Ready対応とかSygnalist HQPlayer NAA動作とかもあるけども、一番の魅力は自家製「ネットワークストリーマー」では決して対応できない「TIDAL Connect」と「Chromecast」に対応してる点だ。
そろそろ日本国内での正式サービス開始が噂される「TIDAL」。"MQA"という新しいハイレゾロスレスの方式で楽曲を配信するのが特徴で、「TIDAL Connect」は「Spotify Connect」をパクったライクにスマホから選曲した曲を対応機器で再生できる。「Chromecast」はGoogle様の独自規格でAndroidではお馴染みのテクノロジーだが、音質の評価が高いハイレゾロスレス配信サービス「mora qualitas」がChromecastにしか対応していないので本製品を使えば(恐らくはビットパーフェクトで)再生できるって訳だ*1。
これが理由で購入したといっても過言ではない。しかも、実際の販売価格が発表当時の予定価格より約1万も安くなっていたのがダメ押し。付属ACアダプタを安価な製品に替えることによってコストダウンを実現したそうだが、元々既に使っている別の電源アダプタを使う予定だったので個人的には改悪どころか感謝しかない。そんな訳で、
発売日当日にゲット。
値下げされたとは言えそれなりのお値段だし、実際に購入前に他の人のレビューで確認したい部分もいくつかある上に自家製「ネットワークストリーマー」もある訳で、本来はそこまで購入を急ぐ必要はなかったのだけれども、ニッチな製品なので初回出荷数は多くなさそうな割に突然の価格改定で購入する人が増えてそうなのと、コロナ禍による半導体不足や物流の遅れで次回ロットの先行きは読めないので今回は酒の勢いで理性を振り切りました。
開封の儀
同梱品
同梱されているのは以下。
- 本体
- ACアダプタ
- WiFiアンテナ
- LANケーブル
- 排他モードセレクター操作用の工具
- クイックスタートガイド
- 保証書類
クイックスタートガイドは最低限のセットアップ用で、もう少し細かい説明を読みたい場合は国内代理店製品HPにある説明書をみましょう(と言ってもそっちもざっくりなのであるが)。なお、今回購入した製品に同梱されていたクイックスタートガイドは英語版だったが日本語版のクイックスタートガイドも国内代理店製品HPで閲覧できる(リンクタイトルは"クイックガイド")。
外観
シンプルなデザインの割にアルミニウム製のケースはずっしりと重く、ラズパイオーディオ用の1000円のケースとは全然違って安心感がある。
前面
左から
- 電源ボタン
- 電源インジケータ("電源ボタン"右側の小さい点)
- ネットワークステータスLED
- オーディオフォーマットLED
- Wi-FiステータスLED("LED/WPSボタン"左側の小さい点)
- LED/WPSボタン
他のZENシリーズと共通化したデザインなんだろうけど、正直かっこいいとはいい難い(特に"STREAM"って文字はフォントどうにかならんかったのという気が)。動作状態がわかるLEDは何かあった時のトラブルシューティングに便利だ。ラズパイオーディオ派は電源ボタン使うの忘れそうだけどなるべくちゃんと使おう。
背面
左から
- WiFiアンテナ接続端子
- 排他モードセレクター
- S/PDIF(同軸)デジタル出力
- USB Type A (x 2)
- USB-C(システムアップグレード用)
- LANポート
- RESETボタン(小さい穴)
- DC5V電源接続端子
このなかで気になる部分は
排他モードセレクター
ZEN streamは起動モードを選択することができる
- All In One(AIO) : 全てのプラットフォーム、フォーマット、機器に有効
- Roon : Roonの環境と結合する時に選択
- TIDAL : TIDALのMastersプランを使用する時に選択
- NAA : HQ PlayerソフトとともにHQ Player NAA(Network Audio Adapter)使用時に選択
- DLNA : DLNA対応アプリと機器と使用する時に選択
AlOで起動すればすべての機能が利用でき、それ以外のモードは専用モードになる。専用モードはWEB画面の「Settings」->「Sources」->「Functionalities Control」で表示される各種サービス向けの機能が最低限有効となった状態で起動するイメージだ。
AIOの初期設定では全ては有効となっている。これが、例えばTIDALを選択した場合は「Tidal Connect」のみOnで残りは全てOffになるイメージ。そうやって不要なプロセスを停止して少しでも音質低減の要因をなくそうという考えらしい。なお、AIO以外はWEB設定画面も利用できなくなるので注意(TIDALモードしか確認してないけど恐らく他も同じ)。
切り替え方は付属の工具またはマイナスドライバー等で溝を切り替えたいモードの番号にあわせた後に再起動するとそのモードで起動する。
USB-C(システムアップグレード用)
恐らく、ROMを更新するのにメーカーが使用するメンテナンス用ポートでユーザが使うものではなさそう。というのも、システムアップデート自体はWEB画面から可能なのだ。
今回入手した製品は初期バージョンは「2.29.2」。その下の"Check Updates"を押すとネットワーク経由で最新のアップデートを確認して適用することができる。現時点の最新は2021/9/30付の「2.29.8」だった。
適用前に更新内容を確認することができる。
FIXES
Suppress Tidal Connect audible noise out of SPDIF, fixed incorrect mdns device name, optimised system update.
2.29.7 -- Suppress Tidal Connect audible noise out of SPDIF, fixed incorrect mdns device name, optimised system update.
2.29.6 -- Optimised UI, updated some translation.
2.29.5 -- Fixed spdif DoP output, fixed error info from Foobar UPnP, optimised UI.
2.29.4 -- Updated pushwifi API, fixed some mixer bugs.
2.29.3 -- Enabled all channels of 5G
2.29.2 -- Added speed info in system update, optimised OTA update, fixed wifi ESSID not supporting utf-8, hided some unnecessary hotspot configurations, fixed not showing wired IP, revised push wifi API, optimised some codes.
2.28 -- Added APIs for Android/iOS apps, fixed bricking system reset, updated translation, added media server tag, disabled hotspot feedback, optimised some threads.
更新が多いのは利用者としては嬉しいことではあるものの、この一月半の頻度を見る限りはまだ安定してないという気がしないでもない。
RESETボタン
なんか困ったらこれを押せば工場出荷状態に戻せる
電源が入っている状態でSIMピンとか安全ピンとかで3秒以上長押ししてから離すとファクトリーリセットがはじまる。
リセット中はネットワークステータスLEDとオーディオフォーマットLEDの両方が赤く点灯する。写真ちょっとわかりにくいけど実際は両方真っ赤になってまるで王蟲さんの激おこ状態のようなのですぐわかるだろう。なお、リセット中は絶対に電源を切ってはだめとマニュアルにもデカデカと書いてあるので気をつけよう。5分程してリセットが終わると勝手に再起動して初回起動時の状態に戻る。
うまく再生できないとか、ネットワークつながらないとかさっぱり原因がわからない時は思い切ってファクトリーリセットするとよい。当然ながら、ファクトリーリセットするとこれまでの設定も消えるので大事な設定はメモしておこう(各ストリーミングサービスを使うだけなら特に設定はないのでメモは必要ない)。なお、ファクトリーリセット後はシステム全体が出荷時のROM格納バージョンに戻るのでWEB画面から最新版へのシステムアップデートを忘れずに。
使ってみた
早速、使ってみますぜ。
初期設定
まずは初期設定、と言ってもクイックスタートガイドに従って操作するだけ。手順的にこれと言って難しい訳ではなく有線接続セットアップで進める場合は各種ケーブルを接続して電源オンですぐに使えるはず。
なのであるが、システムアプデートや高度なシステム設定変更とか排他モードセレクターの変更色々と試してたら、いくつかハマったポイントがあったので同志のために備忘録代わりに残しておくことにする。
興味のない人は以降はすっとばして「再生」に行っちゃってください。
手順3でいつまで経ってもネットワークステータスLEDが点灯しません
LED消灯設定になってるパターンのやつ。電源を入れてしばらくしても点灯しない場合は一回LED/WPSボタンを押してみよう。一番最初はこの状態で5分位悩んだ、うふふ。
ブラウザから"ifi.local"でWEB画面が表示されません
"ifi.local"からIPアドレスを解決できないケースが少なからずあった。その場合は次のどれかを試す。
- スマホではなくPCのブラウザで接続する
- 「WiFi接続セットアップの手順4の場合」は”192.168.211.1"を指定
- それ以外はIPアドレスを調べて直接指定
自分の経験上、スマホのブラウザ(AndroidのChrome)からだと失敗することが多かった気がしたのでPCからの接続を推奨。2はIPアドレスが固定なので良いとして、問題は3の自宅のネットワークに接続した後だ。具体的には、以下の2パターンで起こる。
- WiFi接続セットアップの手順10以降
- 有線接続セットアップの手順4以降
WiFi接続セットアップ初期のホットスポット状態を除いて、ZEN StreamはDHCPでIPアドレスを取得する。IPアドレスが何であろうが"ifi.local"という名前でアクセスできるから問題ありませんよってことなんだが、残念ながら名前解決できず繋がらない確率は割とある。そんな場合は以下を試してみよう。
- アクセスする側のPCやスマホを再起動してもう一度試す
arp
コマンドでネットワーク内のIPアドレスを調べて片っ端から試す
arp
コマンドの使い方は以下のHPとかを参照。
同一ネットワーク(社内 LAN)にある IP アドレスの一覧を表示する │ TEAM T3A
ネットワーク的に繋がってる筈なのにブラウザからWEB画面が表示できません
"ネットワーク的に繋がってる"とは、次の2点がOKな場合。
- ネットワークステータスLEDはインターネット接続状態である(白かシアン)
- "ifi.local"かIPアドレスに対して
ping
コマンドを実行すると応答がある
この状態なのにブラウザでアクセスしてもWEB画面が表示されない原因としては、排他モードセレクターを「1. AIO」以外にしてる場合が考えられる。クイックスタートガイドの手順1で”モード1(AIO)を選択”と明記されているのだが、ファクトリーリセットやりまくるうちにすっかり忘れておりました、てへへ。
スマホでは再生されてるけどDAC側は無反応
WEB画面の「Settings」->「Playback Option」でOutput Deviceが正しいか確認。USB-DACを使用しておりセットアップ時点の音出しは問題なかったけどシステムアップデート後に設定が勝手にSPDIFに変わってるのに気付かずこれもまた時間を無駄にしてしまった、トホホ。
再生
さて、ようやくメインである再生の話。と言っても、まだそこまで聴き込んでないし音質は主観でしかないので皆が気になるであろう機能的な面を書いておく。
今回試したのは次の再生。
Spotify Connect
ラズパイオーディオ経験者で本製品の購入を考えている人が一番が懸念している「Spotify Connect」。結論から述べると、本製品の「Spotify Connect」は
Spotify提供の正式版
だと思われる。こう判断したのは次の理由からだ。
Premiumアカウント不要で利用可能
本製品はVolumioベースであるというのが特徴なのだが、Volumioの「Spotify Connect」はOSS版の「librespot」またはそれをベースにしたライブラリを使って実現していた筈だ。librespotはSpotifyの古いSDKを基にしているのでPremium契約のアカウントが必要だったと記憶している。本製品の場合、アカウント情報の設定も不要な上に現在Premium契約が切れている自分のアカウントで再生できる。
ライセンス表記にSpotifyのOSS記載がない
WEB画面の「Settings」->「System」->「Open Source Licenses」で本製品が利用している主だったOSSの一覧が表示される。
この一覧に「Spotify Connect」と「TIDAL Connect」が存在しないのはフリーソフトウェアではなくプロプライエタリなソフトウェアであるという理解で問題ないだろう。
ということで、もうすぐ開始予定の「Spotify HiFi」にも対応してくれる可能性は非常に高い。
因みに、本製品でAirPlayを実現するために使われている「Shairport-Sync」は上記ライセンス一覧に名称が明記されているし、WEB画面でも「Shairport-Syn(AirPlay)」って名称をわざわざしているし更には製品HPでAirPlayのロゴは使われてない(逆にSpotifyとTIDALのロゴは使われてる)。
TIDAL Connect
本製品の同シリーズである「ZEN DAC」がMQA対応になったことからも、MQA対応のDACを繋げばMQAフルデコードできるのは容易に想像できるが、MQA非対応のDACに繋いだ場合はどうなるのか。結論から述べると本製品の「TIDAL Connect」は
MQAコアデコーダーを内蔵している。
スマホのTIDALアプリから”Ifi's Streamer(本製品)"を選択。なお、現時点ではPCのTIDALアプリでは「TIDAL Connect」は利用できない。
接続後のアプリの再生画面。右上の「MASTER」がハイレゾロスレスの楽曲再生を意味している。
本製品と接続しているMQA非対応のUSB-DAC「ADI-2 DAC FS」の再生中の液晶画面。右下の数値が「88.2」となっているのが確認できる。
実はTIDAL、これまでもDLNA経由等でロスレス再生はできていた。「TIDAL Connect」でも最低ロスレス再生はできるとは思っていたが、フルデコードではないにしてもハイレゾロスレスで再生してくれるのは嬉しいではないか。後はMQA対応DAC買えばいいだけだし。
ということで、気になる人は
ZEN Stream、ゲットだぜ!
*1:Chromecast対応のアップデートリリースとmora qualitasのサービス終了のどっちが速いのかは気になるところですが...。