家庭内おひとりさま向けホームシアターをつくろう(その5)
前回の続き。
前回の聴き比べ実験で、マルチチャンネルオーディオで制作されているコンテンツであっても、「SXFI AMP」を接続するデバイスによって音の聞こえ方が異なることがわかった。理由はともかく、自分にとっては「SXFI AMP」を通してコンテンツの音質を堪能する環境はPCがベストなのは間違いない。
ところで、インターネット経由で配信される映像コンテンツはマルチチャンネルで配信されているのだろうか。というのも、音楽の場合では、CDに収録されているインターネット経由で配信される音源が異なるのが当たり前だ*1。
映像の場合、マルチチャンネルオーディオで製作された作品は通常そのままマルチチャンネルでDVDやBlue-ray等のメディアに収録されているが、インターネット経由で配信される時の音声はオリジナル同様にマルチチャンネルオーディオで配信されるのだろうか。
というわけで、またまた調べました。
映像配信サービスのマルチチャンネル配信
今回調べたのは以下のサービス。
これらのサービスが、マルチチャンネルオーディオで制作されているコンテンツを「俺シアター」候補である次のデバイスに対して、音声をマルチチャンネルで配信しているかを調べてみた。
- PC(Windows/Mac)
- Androidデバイス
- iOSデバイス
- Fireタブレット
Netflix
Mac以外のすべてのデバイスで音声をマルチチャンネルで配信している。
5.1 サラウンド音声は現在、Microsoft Silverlight またはHTML5 を使用したパソコンでのストリーミングに対応していません。ただし、Windows 8とWindows 10のNetflixアプリは対応しています。
Amazon Prime Video
Fireタブレットのみ音声をマルチチャンネルで配信している。
以下リンクにFireタブレット以外は「5.1オーディオ:不可」の記載あり。
Amazon.co.jp ヘルプ: Prime Videoの対応デバイスと機能
Hulu
現状はどのデバイスにも音声をマルチチャンネルで配信してない。
マルチチャンネルオーディオには対応していません。すべての作品をステレオサウンドでご視聴できます。
マルチチャンネルオーディオに対応していますか? | Huluカスタマーサポート - Hulu Helpcenter
U-NEXT
Androidのみ音声をマルチチャンネルで配信している。なお、現在ドルビーオーディオで提供されている作品は100位*2
ドルビーオーディオはAndroidアプリのみ対応しております。
ドルビーオーディオ(Dolby Audio)の機能を使いたい | U-NEXTヘルプセンター
Google Play movie
ソースがないので不明。
iTunes movie
ソースがないので不明。
まとめ
各サービスをPCで再生した場合の音声のマルチチャンネル配信状況をまとめるとこうなる。
サービス | マルチチャンネル配信 | 再生方法 |
---|---|---|
Netflix | △(Winのみ) | 専用アプリ |
Amazon Prime Video | ✗ | ブラウザ |
Hulu | - | ブラウザ |
U-NEXT | ✗ | ブラウザ |
Google Play | ? | ブラウザ |
iTunes | ? | 専用アプリ |
マルチチャンネル配信していないHuluはともかくとして、PCでのマルチチャンネル配信を明記しているのはNetflixだけでしかもWindowsアプリのみ。そう考えるとどうもブラウザ再生に何か秘密がありそうだ。
よーし、聞き比べてみようではないか。
試してみる
PC(Windows)で各サービスで同一作品を再生してサラウンドの聞こえ具合を比べてみた。
再生コンテンツ
せっかくならサラウンドがすごい作品を試したい。最近の作品で戦争モノが一番わかりやすそうだと思い、ネットの情報を参考に各サービスで提供されている作品を探してみたところ、Huluを除くすべてのサービスで次の作品を発見。
アメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズ史上最悪の惨事と呼ばれるレッドウィング作戦の全貌を映画化した戦場アクション。実際に作戦に参加し唯一生還した兵士の回顧録を原作に、極限状況下の戦場の真実をリアルに描く。監督は、『ハンコック』などのピーター・バーグ。『ディパーテッド』などのマーク・ウォールバーグを主演に、『バトルシップ』などのテイラー・キッチュ、『メッセンジャー』などのベン・フォスター、『イントゥ・ザ・ワイルド』などのエミール・ハーシュら実力派が共演する。
以前に見たのだが、ヘリや爆撃機、銃撃戦などサラウンドを味わうにはもってこいの作品だ。なお、「Google Play」と「iTunes」はサブスクではないのでHDでレンタル。
再生シーン
流石に2時間x5セットは過労死するので、ヘリとか爆撃音等の迫力満載の以下のシーンを聞き比べることに。
開始 | 終了 | シーン |
---|---|---|
20:20 | 23:30 | 出撃 |
1:22:00 | 1:23:50 | 救援1 |
1:48:00 | 1:49:00 | 救援2 |
再生方法
「Netflix」と「iTunes」は専用アプリで再生、それ以外はChromeブラウザ(version73)で再生した。なお、Chromeはデフォルトでマルチチャンネル再生が無効化されているらしいので、以下のオプションを有効にして再起動後に再生した。
chrome://flags/#try-supported-channel-layouts
Netflix
公式にマルチチャンネル対応を謳っているだけあり、迫力のサラウンドである。特に重低音がすごい。おそらくは配信用にエンコーディングを行う際に独自のイコライジングをかけていると思われるが、まるでIMAXで映画を見ているような迫力で強気の価格設定も納得の音。
U-NEXT
本作はマルチチャンネル配信ではなかったものの、リファレンスとして見てみたところ、やはりマルチチャンネル配信しているサービスと比べると音の分離が今ひとつに思えた。具体的にはヘリの爆音とヘリの風圧で舞い上がる砂塵の音などの分離が今ひとつで定位が近い印象。とはいえ、マルチチャンネルで制作された作品を2chステレオとしてダウンミックスして配信しているせいか、じっくり聞き比べない限りはそこまで違和感はない。
iTunes
iTunes Storeでの情報では5.1chと記載があるが、レンタル後の作品情報では記載がなかったので若干心配であったが、再生してみると音の分離もしっかりしておりマルチチャンネルで再生されているようだ。ただ、重低音の迫力はNetflixと比べてイマイチなのはこちらが原音に忠実なのかもしれない。
実はストア版アプリをインストールして試した時はサラウンド感はイマイチで2chだと思っていたのだが、「SXFI AMP」を接続した状態でスタンドアロン版をインストールしたら明確にマルチチャンネルであると判断できたので2回レンタルしたけども無駄ではなかった。
Google Play
PCのブラウザで見る作品情報には5.1chとの記載はないが、Androidアプリで見ると5.1chと表示されるのでこれは2chなのかと思っていたが、再生してみるとiTunes同等の音の分離を感じられたので自分の耳を信じる限りではマルチチャンネルで再生されていると思われる。実はChromeのオプション変更前に試した時は2chだと思っていたので変更後に試してよかった。其のためにわざわざ2回レンタルしたんだけど。
Amazon Prime Video
こちらもブラウザで見る作品情報には5.1chとの記載はなかった。実際に再生してみたところ、U-NEXTよりはサラウンド感を感じたのでひょっとしてマルチチャンネル配信されているのかと思ったのだが、iTunesとGoogle Playと何度か聞き比べてみたところ、音の分離が若干弱くRPGの飛んでいる方向感に違いがあった。このことから、恐らくは公式の回答通りマルチチャンネルではない可能性が高い。
まとめ
NetflixとiTunes、Google Playはマルチチャンネルだと胸をはって言えるが、Amazon Prime Videoはかなり微妙なライン。特にNetflixは独自のチューニングで重低音が半端ないので個人的にはイチオシであるが、最新作はすぐには追加されないので早く体験したい場合はiTunesかGoogle Playでレンタルするのがベスト。
既にAmazon Prime会員で映画にそこまでお金かけたくないのであればNetflixの代わりにAmazon Prime Videoもアリ。
ふう…ようやく「俺シアター」の構成が固まったぜ(続く)。