SONYの高音質ストリーミングサービス「mora qualitas」と「Amazon Music HD」を比べてみた
先日から先行無料体験がはじまった、SONYの高音質ストリーミングサービス「mora qualitas」。
せっかくなのでAmazonが先月に開始した高音質ストリーミングサービス「Amazon Music HD」と比較してみた。
料金
サービス | 月額 |
---|---|
mora qualitas | 1,980円(税別) |
Amazon Music HD | 1,980円(税込) |
”mora qualitas”は税別なので、税込だと月額2,178円となる。また、"Amazon Music HD"はプライム会員なら1,780円(税込)なので、"Amazon Music HD"との最大価格差は約400円となる。
配信楽曲数
”mora qualitas”は、現在(2019年10月末)は先行体験ということもあって配信楽曲数に関するアナウンスはない。対する"Amazon Music HD"は 6,500万曲以上で、ハイレゾ配信はそのなかの数百万曲とのこと。
スペック
サービス | ロスレス | ハイレゾ |
---|---|---|
mora qualitas | 44.1 kHz / 16 bit | 最大96.0 kHz / 24 bit |
Amazon Music HD | 44.1 kHz / 16 bit | 最大192.0 kHz / 24 bit |
共に配信形式は"FLAC"。両サービスとも高音質をうたっているが、ハイレゾの最大サンプリングレートは"Amazon Music HD"のほうが上だ。
再生環境
サービス | PC | スマホ | 家庭用オーディオ機器 |
---|---|---|---|
mora qualitas | Win/Mac | - | - |
Amazon Music HD | Win/Mac | Android/iOS | HEOS |
”mora qualitas”は、現時点ではPCのみ。今後スマホも対応予定とのことだが、家庭用オーディオ機器については現状不明(最低限でもSONY製品は対応するだろう…)。なお、ウォークマンはAndroidベースのモデルならスマホ対応が完了すれば利用できるはずだ。
配信曲
手持ちの"mora"で購入したハイレゾ音源を元に、”mora qualitas”で楽曲を探してみたところ、Michael Jacksonの「Beat It」以外はすべて販売しているものと同クオリティで配信されていた。"mora"で販売されている「Beat It」は「176.4 kHz / 24 bit」なので、”mora qualitas”のサービス上限「96.0 kHz / 24 bit」に制限されているのかもしれないと思ったのだが、"mora"で販売中のハイレゾ楽曲でも”mora qualitas”で配信されていないものもあったので、現時点では必ずしも「"mora"の販売楽曲」=「"mora qualitas"の配信楽曲」ではないようだ。
参考までに、同じ曲の"Amazon Music HD"でのサンプリングレートを調べてみたところ結構違いがあった。
アーテイスト | 曲 | mora qualitas | Amazon Music HD |
---|---|---|---|
Eagles | Hotel California | 96.0 kHz / 24 bit | 192.0 kHz / 24 bit |
Queen | Somebody To Love | 96.0 kHz / 24 bit | 96.0 kHz / 24 bit |
GoGo Penguin | Raven | 88.2 kHz / 24 bit | 44.1 kHz / 16 bit |
Daft Punk | Give Life Back to Music | 88.2 kHz / 24 bit | 48.0 kHz / 24 bit |
宇多田ヒカル | 花束を君に | 96.0 kHz / 24 bit | 96.0 kHz / 24 bit |
Maroon 5 | シュガー | 96.0 kHz / 24 bit | 96.0 kHz / 24 bit |
Michael Jackson | Beat It | 96.0 kHz / 24 bit | 96.0 kHz / 24 bit |
Nirvana | Smells Like Teen Spirit | 96.0 kHz / 24 bit | 96.0 kHz / 24 bit |
聴き比べ
以下の環境で聴き比べてみた。
区分 | 製品 |
---|---|
トランスポート | Windows PC |
DAC | TEAC UD-505 |
ヘッドフォン | DENON AH-D7200 |
残念ながらトランスポートとして愛用している「 RPi(Raspberry Pi 3) 」では"mora qualitas"も"Amazon Music HD"も再生することはできないので、今回はWindows PCを利用した。
聴き比べる楽曲は両サービスで同じビットレートであった以下の曲。
- 宇多田ヒカル「花束を君に」
- Maroon 5「シュガー」
- Michael Jackson「Beat It」
- Nirvana 「Smells Like Teen Spirit」
両サービスで聴き比べてみたところ、全ての曲で"mora qualitas"が良い音に聞こえた。同じビットレートにもかかわらずここまで明らかに音質が違うのはどうしてなのか。実は、"mora qualitas"のアプリは音質にこだわった設計になっているからだ。
より高音質でお楽しみいただくには (Windows) – ヘルプ
残念ながら、"Amazon Music HD"のアプリはそのような設定が出来ないので、配信楽曲を忠実に再生することができないのでそこが聴き比べの差となっているようだ。
ということで、PCでの再生ということであれば、音質的に"mora qualitas"が良いのだが、先行無料体験期間ということもあってか、現状はまだまだ不満も多く今後の改善に期待したいところだ。
"mora qualitas"の改善要望
配信楽曲
現在”Spotify”を愛用している身からすると、圧倒的に少ない。今回比較した"Amazon Music HD”と比べてもかなり少なく感じた。ただ、これは実はカラクリがあって"mora qualitas"はロスレスしか配信していないのに対して、"Amazon Music HD”はロッシーな曲も利用できる。"Amazon Music HD”は"Amazon Music Unlimited"のアップグレード版なのでロスレスではない、ロッシーな楽曲も聴けて当然なのであるが、"Amazon Music Unlimited"の説明にも6,500万曲というどこかで見たことがある数字が書かれているので実際にロスレスの曲がどれくらいあるのかはわからない。
そんなこともあってか、"mora qualitas"の曲が圧倒的に少ない印象が強いのであるが、実際には"mora"で販売しているハイレゾ楽曲でも配信対象外となっているものも多いので現状ではかなりさびしい。"Amazon Music HD"には価格的にも負けているので、ここはひとつ"mora"で取り扱うロスレス・ハイレゾ楽曲は全部配信する位の勝負にでてもらいたいところだ。ライセンスの関係で難しいのであれば、mora連携という機能もあるのだから、せめてmoraで購入した音源は購入ユーザに限ってストリーミング再生できるようにしてもいいのではないだろうか。
楽曲検索
正直、後発のサービスの割に検索がイケてない。同じアーテイストや曲名なのに、検索がカタカナと英語で結果が揺れたりするのはまだ仕方ないと思えるのだが、一番困るのは検索結果にノーマル版とハイレゾ音源版のアルバムが混在するのでハイレゾ音源を聴きたくても簡単に曲を簡単に探せないことだ。
普通のサブスク系よりも高いお金を払ってまでハイレゾ配信サービスを利用するのに、本来聴けるはずのハイレゾ音源が探せずCD音源で聴くことになるのは利用者としてはちっとも嬉しくない。むしろ金返せレベルの問題に思えるので、ここは"Amazon Music HD"を見習って簡単に環境に応じた最高音質で再生できるようにして頂きたい。
再生環境
現状PCのみで、今後はスマホという話だが、高音質で再生するにはやはり家庭用オーディオ機器での再生対応はしてもらいたいところだ。SONY製品のみという気持ちもわからなくないがサービスとして活かすためには門戸を広げて欲しい、HEOSでも構いませんし、APIを公開して貰えたら誰がRPi向けに再生アプリ作ってくれるかもしれません。
ということで、現状はまだまだ荒削りだけれども本サービスに向けて期待してますよ、SONYさん。無料期間なのに偉そうですいませんでした。